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あしあと

    第14回 島村家の系譜(13)

    • [初版公開日:]
    • [更新日:]
    • ID:2720

    島村盛助(8)

    「ある日先生が文部視学委員として視察に来られてたまたま私が五年生の英作文の授業をしているところを見られた。ただその一回の遭遇が縁となって、それから五年の後(昭和五年四月)私が富山高校在任中に思いがけなくお手紙を頂いて山形高校に招へいされ、以来今日に至った。」
    これは、盛助が中心となり編さんをした『岩波英和辞典』(以下、『辞典』とします。)の共著者の一人である田中菊雄氏が、盛助と出会ったきっかけを述べているものです。『英語研究者のために』という著書にあるこの部分からは、盛助との出会いが大正十四年から十五年頃であることがわかります。また、大正十二年にイギリスから帰国したのち、山形高等学校の教授を務めながら、文部省の視学委員も務めていたこともわかります。
    『辞典』にある田中氏の序文によると、昭和五年に山形高等学校(以下「山高」とします。)に招へいされた田中氏は、盛助の「教壇の延長として英語教授を内面的に革新すべき小辞典」を作りたいという夢を知ります。このことについて盛助と朝夕に語り合い、いつしかその夢を共有するようになりました。その年の秋に、山高開校十周年記念式が行われ、出席のために来訪した、山高出身で当時九州帝国大学の助教授をしていた佐藤通次氏の知るところとなりました。感銘を受けた佐藤氏が、岩波書店社長の岩波茂雄氏とともに出版を勧めたことから、小辞典の出版は夢から具体的なものへとなりました。
    編さん作業の過程においては、掲載すべき単語の選出から始まり、発音を表現する記号の表記問題、あるいは、単語の説明方法など、さまざまな苦労があったようです。これは別の機会にご紹介いたします。
    昭和五年秋からの作業開始に始まり、足掛け七年の歳月を経た昭和十一年四月、『岩波英和辞典』が出版されました。それまでの英和辞典にはない革新さは、今なお、高い評価を受けています。

    『岩波英和辞典(初版)』表紙の写真

    『岩波英和辞典(初版)』表紙

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