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あしあと

    子を生む

    • [初版公開日:]
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    そして、いよいよ出産の日がやってきます。出産は「障子のさんが見えなくなったら生まれる」「時計の針が見えなくなったら生まれる」「片足を棺桶に突っ込んでいる」などといわれ、まさに命がけでした。また出産は大量の出血をともなうことからケガレとされ、産のケガレ(血ブク)は死のケガレより(死ブク)より強いといわれました。特に産後21日目のトコアゲまでは「日に当たってはいけない」などさまざまな制約がありました。

    出産

    町内では昭和40年代まで家庭分娩が広く行われていました。出産は嫁ぎ先で行われることが多く、部屋は若夫婦の寝室である奥の部屋が多かったようです。
    いよいよ出産が近づくと産婦は産後21日間、髪を洗ってはいけないので髪を洗い、そして麻ひもで髪を縛ります。麻は丈夫なので「丈夫な子を授かる」という願いが込められています。この麻ひもはお七夜の雪隠(せっちん)参りでオサゴを入れた半紙を縛ることに用いたりします。陣痛がだんだん強くなると腹帯を解き、寝巻きに着替えます。布団を汚さないように、あらかじめ作っておいた灰布団(かまどの灰を入れた布団)を敷き、さらに油紙を敷き、そこでお産をしました。生み方は座って生む「座産(ざさん)」が一般的でしたが、お産婆さんの指導で「寝産(ねざん)」が広まりました。でも「座産でないと生んだ気がしない」と拒む人もありました。子供が生まれるとすぐ、実家から米と鰹節と味噌が届き、この米を炊きます。これをウブタテゴハンといい、釜のふたをさかさまにしてご飯を高盛りにして荒神様に供え、産婦とお産婆さんが食べました。子供が生まれるとお産婆さんがへその緒を切り、産湯につかわせます。「後産(のちざん)」は夫が受け取ると、半紙などに包んで大戸の敷居の下に埋めました。

    助産

    産婆規則が制定された明治末期まで近所に住む手先の器用な人が子供を取り上げました。この人をトリアゲバアサンあるいはコトリといいます。お産婆さんはひと月に一回、往診し血圧や腹囲・心音などを調べ、お産になると助産をしました。そして、お七夜まで毎日お湯をつかわせに来てくれました。宮代町では根岸さん、神田さん、石井さん、岡安さんなどのお産婆さんが活躍しました。また、大正初期に亡くなった男性のトリアゲバアサンがいたという伝承があります。また、明治時代、日清戦争の援護活動の一環として、兵員の家族出産は遠近にかかわらず無料で出産を取り扱った須賀村のお産婆さんがいた(『埼玉県史料叢書』)ということです。

    産後の処理

    胎盤のことを後産(のちざん)、またはエナといい、これは油紙や半紙に包んで大戸(玄関)の敷居の下に埋めました。人に多く踏まれたほうが丈夫に育つといいます。
    へその緒は生後数日で落ち、桐の箱に入れて取っておいたり、お七夜の雪隠参りで便所神に供えたりしました。子供が大病したとき、これを煎じて飲ませるとよいともいわれています。
    産湯や洗濯に使った水は先達や神主に見てもらった方角(アキノカタ)に穴を掘り、そこに捨てました。

    産後の禁忌

    産後21日目のトコアゲまで産婦はさまざまな制約を受けました。髪を洗ってはいけない、風呂に入ってはいけない、日に当たってはいけない、神様に関することをしてはいけない、針仕事をしてはいけないなどです。しかし、それは一方で産婦をゆっくり休養させる意味もありました。

    産婆さんの仕事

    現在もご健在のお産婆さん、根岸ますさんにお産婆さんの仕事についてたずねました。明治44年生まれで昭和5年に産婆実地試験に合格しお産婆さんになられました。当時は電話も普及していないころでした。夜中に「お産ですからついて来てください。」と家の人が自転車で迎えに来て、その後を自転車で走っていて、前方の人が道を曲がったのに気がつかずにいってしまい川に落ちそうになったり、お産が重なった時のために自宅に黒板を置き、今どこにいるかを書いておいたり、さまざまなご苦労があったそうです。お産婆さんの仕事はお産だけではありません。まず妊娠5ヶ月を過ぎたころからの検診。これはひと月に一回、血圧や腹囲、心音などを記録します。出産予定日の算出もしました。また、お産の後はお七夜まで毎日子供をお湯につかわせにいきます。そのとき、へその緒の消毒および産婦の消毒をし、消毒綿をつくって置いてきました。

    お問い合わせ

    宮代町役場教育推進課文化財保護担当(郷土資料館)

    電話: 0480-34-8882

    ファックス: 0480-32-5601

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