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    住民監査請求に係る監査結果

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    宮代町監査委員告示第2号

    地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項の規定による監査請求について、同条第4項の規定により監査を行い、その結果を請求人に対して通知したので、これを公表する。

    平成22年11月24日

    宮代町監査委員 松村 守朗
    宮代町監査委員 角野 由紀子

    第1 監査の請求

    1 請求人

    住所 (略)
    氏名 (略)

    2 請求書の提出

    平成22年9月29日

    3 請求の要旨

    (以下本件「職員措置請求書」原文のとおり)

    1-1 請求の要旨
    町はホームページに本年4月23日付で、現町職員を上司の決済印を無断で使用した等の理由で処分したことを公表した。また同日付で全議員に同内容を資料として配布し、同5月14日全員協議会で報告をした。
    処分内容は、対象職員を減給10分の1(1箇月)とし、管理監督者に対しては文書訓告ないし口頭注意であった。
    さらに再発防止策として職員のコンプライアンス意識の徹底と、チェック体制の強化をうたっている。
    しかし、この処分に関して以下の問題についての説明がなされていない。

    1. 事件の概要として、(1)請書をとらずに2件の業務委託を行った(2)その支払いにあたり添付書類を1件改ざんした(3)3件の文書に上司の決済印を無断で使用した(4)県進達文書の2件で不適正処理があった(5)4件の決済文書等を決済未了のまま放置した事実をあげ、信用を著しく傷つけたとしている。
      しかし、なぜ対象職員がこうした行為に及んだかの背景ないし動機の説明、また同職員のこれまでの勤務評価を含む内在的資質に全く触れられていない理由は何故なのか。
    2. 同職員は、過去にも他人の印の無断使用をはじめ今回と同様なことを行ったと噂されているが事実を調査したのか。
    3. 今回明らかになった5つの行為は、どれ一つをとっても公務員としてよりもそこに働く人間として恥ずべき行為である。特に、(2)(3)は刑法第155条、156条、158条に抵触する重大な行為であると考えられるが、告発を含めた対応を考慮しなかったのか。
      今回の事件は職員のコンプライアンス意識以前の常識人の問題であり、真面目に職務に精励している他の職員にとっては迷惑な話である。仮に今回の処分が温情に基づくものであるとするならば町としても重大な過ちを犯したことになる。
      町の「処分基準」に照らして、停職以上の処分が妥当であるにもかかわらず、町長はその適用を誤り公金を不当に支出した。
      今回の事件および処分内容にともなう波紋が職員間の混乱、疑心暗鬼につながらないことを願いつつ措置請求するものである。

    1-2 求める措置
    町長による本懲戒処分は不適切であり、払いすぎた給与の返還を町長に求める。

    第2 請求の受理

    本件請求は、地方自治法第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成22年10月7日にこれを受理した。

    第3 監査の実施

    1 証拠の提出および陳述

    請求人に対して、地方自治法第242条第6項の規定により、平成22年10月20日に陳述の機会を設けた。これに対し、請求人から請求内容の補足説明があった。
    また、同日、関係職員に陳述の機会を設けた。これに対し、関係職員として副町長および総務政策課長から資料に基づく説明があった。

    2 監査の対象事項

    本件請求書に記載された内容および陳述時の補足説明から、対象職員について、停職以上の処分が妥当であるにもかかわらず、減給10分の1(1箇月)の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)とし、処分に基づく給与を支払ったことが違法または不当な公金の支出に該当するかどうかを監査の対象とした。

    3 監査の対象部局

    監査対象機関は、次の部局とした。
    宮代町総務政策課、同産業建設課、同会計室および宮代町職員懲戒等審査委員会

    4 監査の方法等

    監査を実施するに当たっては、請求人の主張する事実を確認するため、監査の対象となる事項について、関係書類の提出を求め調査するとともに、総務政策課長および総務政策課庶務行政室長の同席を求め、平成22年10月29日および同年11月2日に監査を行った。

    第4 監査の結果

    本件請求については、次のとおり決定した。

    1 事実関係の確認

    本件請求書の要旨、請求人の陳述および提出された事実証明書並びに関係職員の事情聴取および提出された資料に基づき、次のように事実を確認した。

    1. 事件の概要
      対象職員は、平成21年度において、請書を徴さず2件の業務委託を行い、その支払いに際し添付書類を1件改ざんしたうえ、3件の文書に上司の決裁印を無断で使用した。また、埼玉県へ進達すべき2件の文書を適正に処理しなかった。さらに、4件の決裁文書等を決裁未了のまま放置するなどの不適正な事務処理を行った。個別の内容は以下のとおりである。
      (1)例年、8月1日から翌年3月末日までの間、数回の汚泥運搬業務が発生することから、同期間の業務に関し1立方メートル当たりの汚泥運搬業務について単価契約を行っていた。そのようなことから平成21年度においても7月中に汚泥運搬業務に関する単価契約を行うこととしていたところ、平成21年5月に、急遽、汚泥運搬業務を行う必要が発生した。しかし、その際、上司に相談および上司の承認なく前年度と同額の消費税込みの単価で依頼可能な汚泥運搬業者1者から見積書を徴し、契約書(請書)を交わすことなく5月分および6月分の汚泥運搬業務を依頼した。
      (2)その後、平成21年8月1日から翌年3月末日までの単価契約を行うため汚泥運搬業者3者から見積書を徴し、最低価格の業者と単価契約を締結した。しかし、前年度までは消費税込みの単価であったが、当該単価契約においては、単価は同額であるが消費税については別途支払う契約となっていたこから、上記(1)の支払い時期である平成21年8月に、当該単価契約書の契約期間の始期を平成21年4月1日に改ざんした上、消費税部分を消費税込みの単価へと改ざんした単価契約書のコピーを支出伝票に添付し、前述の消費税込みの単価での請求書に基づき汚泥運搬業務代金の支払いを行った。
      (3)前述汚泥運搬業務代金の支払いに際し、上司(担当主査および室長)の決裁印を無断で使用し、事務処理を行った。
      (4)平成21年12月25日に契約すべき「第一中継ポンプ場沈砂業務委託」の決議書が、同日付起票のまま決裁未了となっていた(平成22年4月7日現在)。
      (5)平成21年9月15日起票の「中川流域下水道(使用変更)承認申請書」が決済未了となっており(平成22年4月8日現在)、中川下水道事務所へ申請書を届出していなかった(同月12日現在)。また、平成22年2月1日に供用開始となる分の承認申請書について、数字を改ざん(前回分未報告によるつじつま合わせ)をしたうえで申請していた。
      (6)中川流域下水道関連の公共下水道の供用開始区域の告示をしていなかった。
    2. 本件処分に至った経緯
      平成22年3月3日に、産業建設課担当室長が、不適正な事務処理を発見後、当該事務を所管する担当内で不適正な事務処理の内容の調査を実施、同月5日に産業建設課長から総務政策課長に不適正な事務処理があった旨の報告があった。
      上記報告を受け、3月8日、総務政策課長および総務政策課庶務行政室長は本人への聞き取り調査を開始し、同月15日、処分の検討を開始した。
      3月下旬、町長は、行為の概要から懲戒処分としての方向性を決定した。
      4月1日、副町長からの指示により、産業建設課担当室長において、他に不適正な事務処理がされていないか再調査を開始し、新たな不適正箇所を発見し、同月8日に再調査を終了した。
      4月9日、産業建設課担当室長から総務政策課長に再調査結果の報告があった。
      4月12日、総務政策課長から町長に今回の行為の全容の報告があった。
      上記報告を受けた町長は、今回の対象職員の行為は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第32条(法令等および上司の職務上の命令に従う義務)および第33条(信用失墜行為の禁止)に抵触し、同法第30条(服務の根本基準)並びに宮代町職員服務規程(昭和55年訓令第4号)第3条(服務の原則)に違背するものであり、処分の検討が必要であるとして、宮代町職員懲戒等審査委員会規程(平成22年宮代町訓令第4号)に基づき設置された宮代町職員懲戒等審査委員会(以下「委員会」という。)に対し、平成22年4月16日、対象職員らに対する懲戒処分について審査を求めた。
      上記、審査の求めに対し、委員会は、本件行為に及んだ職員の責任を認め、対象職員の行為は、重大な非違行為であり、地方公務員法第29条第1項第1号および第2号に該当するものであるとした。そのうえで、処分の量定については、「懲戒処分の指針」基本事項に掲げる(1)非違行為の動機、態様および結果、(2)故意または過失の度合い、(3)対象職員の職責と非違行為の関係、(4)他の職員および社会への影響、(5)過去の非違行為の状況、その他最近の他団体における事案の処分事例を参考にし、総合的に判断の上、対象職員について、減給10分の1(1箇月)との処分が相当であるとする報告を、町長に対し、平成22年4月20日に行った。
      委員会からの報告を受け、町長は、平成22年4月23日、減給10分の1(1箇月)の処分が相当であると判断し、当該処分を行った。

    2 監査委員としての判断

    住民監査請求の対象は、普通地方公共団体の長や委員会などによる違法若しくは不当な財務会計上の行為または怠る事実であるが、上記行為などが違法若しくは不当となるのは、単にそれ自体が違法若しくは不当な場合だけでなく、その原因となるべき行為が違法若しくは不当な場合の財務会計上の行為なども違法若しくは不当になると考えられる。本件においても、対象職員に対する減給10分の1(1箇月)との懲戒処分が違法若しくは不当で、より重い停職処分が相当であれば、停職期間中は給料が支給されないことから、そのような場合に対象職員を減給10分の1(1箇月)として給料を支給したことは違法若しくは不当となる。そこで、まず、本件懲戒処分の違法性などについて検討した。
    なお、本件職員措置請求書中において請求人が主張している、1-1(2)対象職員の過去の非違行為の調査を行ったかどうかということについては、前述、1事実関係の確認(2)本件処分に至った経緯の中で、委員会の審査過程において、過去の非違行為の状況についても考慮の上で判断したことを確認した。
    また、1-1(1)対象職員が行為に及んだ背景および動機、対象職員のこれまでの勤務評価を含む内在的資質に全く触れられていない理由および同(3)請求人が刑法に抵触すると考える今回の非違行為に対しての告発を含めた対応の考慮についての判断は、いずれも監査委員の職務権限を超え、監査委員の職務になじまない、また、そのことを理由として本件懲戒処分の量定に影響するものではない、という理由により監査の対象としないこととした。

    1. 本件懲戒処分の違法性などについて
      公務員に対する懲戒処分は、公務員としてふさわしくない非行がある場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため科される制裁である。地方公務員法は、職員に法令違反、職務上の義務違反など一定の懲戒事由があった場合に、懲戒処分をすることができると定めている(同法第29条第1項)が、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかについては、平等取扱の原則(同法第13条)、公正であるべきこと(同法第27条第1項)を定めている以外には具体的な基準は定めていない。したがって、職員に対する懲戒処分を行うに当たって、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の当該行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員および社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられるのであるが、その判断は、上述のような広範な事情を総合的に考慮してされるものであり、懲戒権者の裁量に任されていると解される。懲戒権者が裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならない(最高裁判所昭和52年12月20日判決同趣旨)ということと判断した。
      また、本件懲戒処分を行うに当たっては、委員会に審査を求め、委員会からの減給10分の1(1箇月)の処分を相当とする報告を受けて、町長は、同懲戒処分を行った。上記処分に至る手続および内容から考えて、本件懲戒処分が裁量権を逸脱して社会観念上著しく妥当性を欠いているとは言えず、また、これを濫用したとも認められない。したがって、町長による本件処分を違法若しくは不当ということはできない。
    2. 給与支給の正当性について
      本件懲戒処分は違法若しくは不当でないことから、本件給与の支給についても違法若しくは不当となることはない。

    以上のとおり、対象職員について、減給10分の1(1箇月)の懲戒処分とし、かつ、懲戒処分に基づき給与を支払ったことは違法若しくは不当であるとは認められず、請求人の主張には理由がないものと判断し、請求を棄却する。

    第5 監査結果の付帯意見

    本件請求事案の審査にあたって、今後における行政事務の適正な執行のため、町長に対し、次のとおり意見を述べることとした。

    本件事案については、財務会計上の違法もしくは不当性等は認められず、懲戒処分を含む一連の措置にも任命権者の裁量権の逸脱や濫用は認められなかったことから、請求人の主張には理由がないと判断し請求を棄却した。

    しかし、当該職員の非違行為による、町職員の信用失墜は大きく、町民の信頼を損なう行為であり、誠に遺憾である。

    また、本件事案による一連の措置に対して、一部町民から疑義を招いたことは町としても重く受け止めなければならないと考える。

    景気の低迷や少子高齢化社会の進展など、社会情勢の大きな変化の中において、行政に対する期待は高くなっているがゆえに、行政や町職員に対する町民の目は、厳しさを増してきており、町職員の懲戒処分の指針を見直しする必要があるものと考える。

    町当局は、日常における事務のチェック機能の確立を図るとともに、研修等を強化し、職員による不祥事の再発防止に努力しなければならない。
    職員もまた、町民から不信を抱かれることのないよう一人ひとりが規律の保持に努め、町民の期待に沿えるよう一層努力する必要がある。

    再発防止については、平成21年度宮代町一般会計決算審査意見書において述べたところであるが、再度それらの項目について十分留意すべきであると判断する。

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