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郷土史料「百間始大縁起」

[2016年11月24日]

ID:2883

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郷土史料「百間始大縁起」

「百間始大縁記」は写本が流布されており、ここでは石井修次郎編、蓮田文化協会発行の蓮田市文化叢書第54号(昭和49年12月)に収録されているものが現在確認されているもので最も古く、寛政9年(1797)の年号が記されているものを収録しました(天保2年に書写)。また、参考に西光院所蔵の元治2年(1865)のものと明治6年判(写)を昭和14年に写したものも収録しました。百間志料(百間史料)で山高師が引用している百間記は内容的に考えて、この百間始大縁記のことであると思われ、ちなみに山高師は文化8年(1811)の書を用いています。内容は、八百比丘尼の伝説、西光院縁起関係、そして岩槻城関係の三つの話に集約されます。

八百比丘尼の伝説は、「寺村(字東)庚申待をしているところへ見知らぬ男が加わり、その男の宿になると、その男は龍宮の者であるといって、皆を逆井の辺の自分の屋敷へ案内しました。広大な屋敷に案内された後、料理が運ばれたが、一人が料理の間に行ったところ、12~13歳くらいの娘のようなもの(人魚)を料理していました。料理が進み、人魚の切り身が出され、一人が紙に包んで家に持ち帰りました。これを知らぬ間に娘が食べてしまいました。この娘、5、6歳になって逆井の浜の船で子どもたちとかくれんぼをしていて、寝てしまいました。いつの間にか船が出てしまい、どうすることもなくなってしまい、ついに若狭小浜に着き、小浜の町の人の養子となって成長し、八百歳も長生きしました。このため、小浜の町に八百比丘尼として祀りました。」というものです。このような、見知らぬ男に案内されて、その者の家に行き、人魚の肉を出される。それを持ち帰って、その家の娘が食べ、八百歳長生きするという物語の構造、内容は小浜市にもあり、広く流布されていた可能性があります。なお、このほかに町内には、前原(字中)に八百比丘尼を祀った祠があったといいます(付近の字は尼沼と称されていました)。

この八百比丘尼の多くの伝説は、生まれは若狭(福井県)であると伝えていますが、宮代を始め、岩槻黒谷等にはそれぞれの地で生まれたという伝説もあります。また、岩槻市黒谷の伝説では、黒谷で生まれた八百比丘尼は諸国をめぐった後、晩年は黒谷で過ごし、百間の地で没したといいます(韮塚一三郎「埼玉の伝説」1979)。

いずれにしろ、伝説の形態は異なるものの、百間の地で八百比丘尼が生まれ、また、没したという伝説が残っているのは興味深いといえます。八百比丘尼は、諸国をめぐり、橋を架けたり、道を開いたりしたといいます。特に、椿の木を植えて歩いたといいます。八百比丘尼と椿の木との深い関係をみることができる。また、若狭小浜は、日本海に面した大陸からの玄関口の一つであったといいます。大陸から伝えられた物資の流通ルートの一端を示すものかも知れません。ちなみに椿も大陸から伝えられたといいます。

西光院の伝説は、西光院縁起には天平年中、西光院創建に係る伝説として行基と阿部仲丸(仲麻呂)の二人の人物が出てきます。行基は阿弥陀堂と五社権現の勧請にかかわり、仏教と土地の神との関係によって話が構成されており、神仏習合の様子が窺われます。また、阿部仲丸については、阿弥陀堂の勧請と共に、遣唐使の話が出てきます。遣唐使で唐に行き、大王の前で碁将棋双六を出され、出来ずに殺されてしまいました。次に、吉備大臣が遣唐使で唐へ渡った時、仲丸の霊が夢に出てきて、碁将棋双六について教え、難を逃れました。続いて、名僧の作った書を読まされるが、またも仲丸の霊に救われたとあります。この伝説の原典は、大江匡房の談話筆録集「江談抄」(平安時代)の「吉備入唐の間の事」であり、その後、説話集に受容され流布されていったようです(「江談抄」岩波古典文学大系32)。

岩槻城関係の伝説は、太田道灌と北条氏の戦で、太田道灌の守る城の堀に浅瀬があるのを見つけ攻め入った話で、「城の堀に浅瀬があるのを見つけ攻め入った話」は、形態を異にしながらも広く流布されている話です。

「百間始大縁記」は、大略このような内容であり、話の内容それ自体は山高龍観師が述べられているように荒唐無稽といってしまえばそれまでですか、その出典、背景、他地域との関係から見てみると、民俗学的、歴史学的にきわめて示唆的な内容を含んでいることが窺われます。

百間始大縁起

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