ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

あしあと

    子を授かる

    • [初版公開日:]
    • [更新日:]
    • ID:2598

    現代は子供を生むためにいろいろな手段を用いる時代ですが、ひとむかし前、「子供は天からの授かり物」とされ、妊娠や出産は人知の及ばないことと考えられていました。そして、子供の誕生は夫婦の喜びであると同時に家の存続やムラの活動の担い手の確保につながることでもありました。妊娠がわかると次なる願いは無事に安産で生まれてほしいということで、そのために安産祈願や帯祝いといったさまざまな儀礼が行われました。家庭分娩が広く行われていたころの町内の子育て習俗から、妊娠中のものを見てみましょう。

    妊娠

    妊娠したことを「ミモチになる」、「はらむ」などといいます。食べ物の好みが変わったり、ヨコッパラが痛くなったりして妊娠したことがわかると姑や夫に最初に告げました。
    中には、恥ずかしくてなかなか言い出せずにいることもあったそうです。妊娠5ヶ月めにはじめて腹帯をしめる帯祝をするためにお産婆さんに世話になるとき初めて話したという人もあります。

    妊娠祈願・安産祈願

    子供を授かるため、そして安産のために町内では姫宮神社や東粂原郷地蔵、須賀島の子育て地蔵などに、町外では白岡町上野田の正伝寺開山様、春日部市一ノ割の円福寺、東京都中央区日本橋の水天宮などに参りました。東粂原郷地蔵では小さなろうそくをいただいてきました。お産のとき、このろうそくには火を灯すと燃え尽きるまでに生まれるといわれ、現在も7月24日の灯籠祭りでいただけます。水天宮では腹帯をいただきました。

    腹帯

    妊娠5ヶ月目の戌(いぬ)の日に妊婦は実家から贈られた腹帯をお産婆さんに巻いてもらいました。犬は多産で安産であることにちなんだもので、腹帯の長さは縁起のいい「七五三(7尺5寸3分)」にしましたがお腹が大きくなるとこれでは短いため、半反にしたものも用意しました。

    鯉の贈答

    臨月になると実家から鯉が2匹贈られます。これは鯉のように元気に生まれ出るようにとの願いを込めたもので、一匹は妊婦が、もう一匹は家族のものが食べました。

    妊婦の暮らし

    妊娠していても重いものは持たないように気をつける程度で出産の直前まで日常の生活や仕事をしました。田んぼで産気づき安産で生んだ話も多く聞かれます。
    妊娠中にしてはいけないことは葬式にでることで、どうしても出るときは鏡をふところに入れて行きました。また、火事を見て小便をするとあざのある子ができるなどといわれています。食べてはいけないものに柿(身体が冷える)などがありました。

    開山様

    白岡町上野田正伝寺にある開山様は婦人病や安産祈願の寺として信仰を集めています。正伝寺は一説には戦国時代の岩槻城主北条氏房が開いたといわれています。開山様は婦人病を良く治したという四代住職大長益善(だいちょうえきぜん)和尚のことで亡くなるときに石碑をたて「これを信仰すれば治る」と言い残しました。宮代町でも妊娠すると安産祈願に参ったという伝承があります。奉納された絵馬に見られる地名は須賀、国納、百間、川端など町域全体にわたり、信仰の篤さを物語っています。

    社寺札にみられる安産祈願

    写真

    町内2軒の農家の母屋の梁(はり)に火伏せのためにくくりつけられた俵の中に納められていた数千枚におよぶ社寺札の中にも安産祈願のためのものがありました。ここでは姫宮神社、円福寺、水天宮のものを紹介します。

    • 姫宮神社
       旧百間村の鎮守です。祭神は多記理姫命、多記津姫命・市杵島姫命の三柱をまつっていす。札には「安産守 子養社」と書かれています。
    • 円福寺
       春日部市一の割にある円福寺は「子育て呑龍様」で有名な群馬県太田市大光院の呑龍上人誕生の由緒寺として、子育て安産の信仰を集め、宮代からの参拝者も多い寺です。
    • 水天宮
       東京都中央区日本橋の水天宮は天御中主命・安徳天皇・建礼門院・二位尼をまつります。安産の神として信仰されています。毎月戌の日に行われる大祭ではたくさんの妊婦や実家の親が腹帯を買い求める姿を見ることができます。

    町内の子育て地蔵

    地蔵はこの世とあの世で子供を守る仏様ですが、町内では須賀島と東粂原で子育て地蔵がまつられ、安産祈願の信仰があります。

    • 須賀島
       須賀島八左ヱ門島の子育て地蔵は享保12年1月銘があり、270年前に建立されたものです。以前は人々は安産祈願し、無事に子供を授かると農産物や絵馬を供えたものでした。
    • 東粂原
       一説に行基菩薩の作と伝えられる地蔵ですが、製作年代は詳らかではありません。現在7月24日に青年会主催で行われる灯籠まつりにおいて、灯されたろうそくをいただき、これをお産のときに灯すと燃え尽きるまでに子供が生まれるといわれています。できるだけ短いろうそくがよいので、青年会の当番の人はカッターで削ぐように切ります。

    お問い合わせ

    宮代町役場教育推進課文化財保護担当(郷土資料館)

    電話: 0480-34-8882

    ファックス: 0480-32-5601

    電話番号のかけ間違いにご注意ください!

    お問い合わせフォーム