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あしあと

    第57回 「盛助」を語る(11)

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    旧制山形高等学校の卒業生の方から、特に多くお聞きできたことは、シェークスピアの作品をテキストにしたときの、その授業がいかにすごかったのかというお話でした。
    前回紹介した書籍「あゝ乾坤」にも掲載されていますが、今回はその中から、盛助氏がイギリス留学での感想も交えて授業をおこなっている部分をご紹介します。
    たとえば、シェークスピアの劇に「ジュリアス シーザー」というのがある。ローマ皇帝のシーザーが、暗殺団に殺される場面で、親友のブルータスもこれに加わっているのを見て、死の直前に言う有名な独白、〈エト トウ ブルート(ブルータスよ、お前もか)の説明など、次のようであった。
    「ブルータスと言わずにブルートとあるのに注意したまえ、これはシーザーがこと切れる前だから、息が切れて、タスと言えない感じ、またブルートは「非情な」とか「けだもの」という意味があるので、「畜生め」とか「血迷ったか」といった感じもだしているのである。このようにシェークスピアの天賦の文才は、味わえば味わうほどすばらしい。舞台効果も十分に考えて、あとは俳優の技量しだいだ。だから、シェークスピアをやる俳優は大変な修行がいる。「エト」と「トウ」もローマ語でラテン語だ。つまり教養がなければやれないのである。オックスフォード大学でも、私のユーモアや、古典の引用をただちにわかるのは、よほど勉強した連中で、普通の英国人では、私の話はよくわかるはずがなかった。」
    前回引用した部分に、「一つの文を四方八方から眺め」「次々に言葉を変えてしまいに名訳をつける」とありましたが、一語一語の意味するところを背景も含めて追求し、その時のその言葉が意味するもっともふさわしい訳をつけるという、後の辞書の編さん時の逸話にも通じるような言葉に対する姿勢がうかがえる、そんなお話ですね。

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